
福田小学校令和四年度卒業生として本校を巣立つ86名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。また本日は、○○様、本校PTA正副会長並びに保護者の方々にはご臨席を賜り、誠にありがとうございます。卒業生、教職員を代表して、心からお礼申し上げます。
只今、皆さんにお渡ししました卒業証書は、6年間いろいろな困難を乗り越え、頑張ってきた証です。委員会活動等でより良い学校にしようと、懸命に努力してくれた姿も見せてもらいましたし、下級生への優しい姿もたくさん見せてもらいました。様々な行事等がスムーズに進んだのは紛れもなく皆さんのおかげですし、皆さんからの「優しさのバトン」は確実に在校生に受け継がれていくと思います。
さて、これからの世の中は、人工知能(AI)の飛躍的な進化に代表されるように、予測困難な時代であり、我が国にとっても厳しい挑戦の時代を迎えるとも言われています。そのような中、今後、皆さんにとっても、時としておそれを感じたり、途方に暮れてしまったりすることもあるかもしれません。だからこそ、皆さんには「さらなる強さ」と「寛容さ」を求めたいと思います。
禅の言葉で「独来独去(ひとりきたり ひとりさりて) 無一随者(いちも したがうもの なし)」という言葉があるそうです。人間生まれるときも死ぬときも一人きり、誰もついてきてはくれないという意味ですが、これからの厳しい人生、いずれお父さんやお母さんも一緒について来てくださることができない、自分だけで歩く日が必ず来ます。そういう中にあっても「強い」人であってほしいと願っています。
私は、卒業アルバムに寄稿した文章に、ほんものになってほしいと記しました。戦中戦後を小学校教師として奉職、多くの著作を著す日本の教育者である東井義雄氏は、自らの詩の中で、
「ほんもの」と「にせもの」は
見えないところの 在り方で決まる
それだけに
「にせもの」に限って
見えるところばかりを気にし 飾り
ますます 「ほんとうのにせもの」になっていく
と、述べています。見えないところで、人をごまかしたりだましたりすることはできるかもしれませんが、自分の良心は絶対にごまかしたりだましたりすることはできません。自分の良心が「しなさい」ということは必ずする、良心が「してはいけない」ということは絶対にしてはいけない。良心が「した方が良い」ということは努力をして実行してください。自分の良心にしっかり従って行動することで、本当の強さが身につきます。
一方、そのような自立した人間にできて、人工知能(AI)にできないことの一つに、お互いに関わり、丁寧な議論をして、よりよい社会を創造していくことだと言われています。人と人がかかわるうえで意識してほしいことは「寛容さ」です。詩人 吉野弘さんも
私はむろん 不完全な人間です
だから私は 人を責める事など
爪の垢ほども 出来ません
だが世の中は
自分の不完全さから目をそむけて
他人の不完全さをそしり合ふのです
私だってさうです
しかし私はさうではなくなりたいと希って居ります
と書いています。生きている以上、どんなに慎重に行動しても失敗することはあるし、どんなにまわりのことを気遣っていても誰にも迷惑をかけないなどということは難しいことです。互いに迷惑をかけるのだから、「おたがいさま」と言いながら許せる人であってほしいのです。
最後になりましたが、保護者の皆様におかれましては、高い所からではございますが、心よりお子様のご卒業をお祝い申し上げると共に、これまでの福田小学校に対する温かくそして熱いご支援・ご協力に感謝し、心から厚く御礼申し上げます。結びになりますが、卒業生全員の前途に幸多かれとお祈りし、式辞といたします。